君の好きなところ(アリあり)

「ねえねえ、アリス君。アリス君は私の好きなところ言える?」

まーた面倒なことを言い始めたぞ、と言わんばかりにアリス君の顔が引きつった。

「まーた面倒なことを言い始めたぞ」
「だってほら! 恋人同士といえば好きなところを言いあってきゃっきゃっするものでしょう?」
「君はまた厚みだけあって中身がぺっらぺらの雑誌を読んだな?」
「……読んだけど、それを読んだから質問したわけじゃないよ!」
「じゃあどういう理由からだ?」
「アリス君は私のどういうところが好きなのか知りたいなーって」
「…………」

アリス君が私を好きなことは知っている。
とてもとても大切に想ってくれていることも知っている。
だけど、たまーにでいいからどういうところが好きか、とかそういう恋人特有のコミュニケーションもしたくなる。
アリス君がそういう事が苦手なのは知っているけど、時々欲張りになってしまう。
恋とはなんて恐ろしいものなのか。

「アリス君?」

黙り込んだアリス君の顔を覗き込む。
彼は眉間に皺を寄せ、考え込んでいるようだった。

「君は僕の好きなところを言えるのか?」
「もちろん! えーとね、まずは優しいところ、私のことが大好きなところ! それと――」
「優しいっていうのは友達の彼氏の写真を見せられて褒めるところがなくて『優しそうな人だね』っていう優しいっていう意味か? それに」
「分かった。じゃあ交互に言っていこう!」
「いや、待て。交互は前者の言葉につられるだろう」
「じゃあアリス君からどうぞ」
「…………分かった」

ようやく観念したのか、アリスくんは苦虫を何匹も噛み潰したような表情を浮かべつつも、重々しく口を開いた。

「や、優しいところ」
「さっきの私の言葉に釣られてない!?」
「仕方ないだろう! 思い浮かんだんだから」
「じゃあ続きを」
「僕のことが好きなところ」
「……うん」
「お姫様だっこをしたらものすごく喜んでくれたところ」
「だって嬉しかったから」
「瞳が綺麗なところ」

不意に子供の頃を思い出す。
彼がくれたその言葉は、今の私に向けられたものではないけれど、それでも……今の私にもくれたことが嬉しくて、たまらなくなった。

「それと――」
「待って、アリス君」
「……なんで君が真っ赤になってるんだ」
「だって不意打ちだったから」

顔が熱い。ぱたぱたと手で仰いで熱を追い出そうとすると、アリス君がコツンと額を寄せた。
近い距離。
恋人だったら当然かもしれない距離。
だけど、私たちにはまだまだ刺激の強い距離。

「もう満足したか?」
「……うーん、もう一声」
「顔を真っ赤にしておきながら!?」
「そういうアリス君だって顔、赤くなってる」
「それは仕方ないだろう! こっぱずかしい真似をしてるんだから」
「だけど付き合ってくれるんだ?」
「好きな子の頼みは聞いてやりたいだろう」

アリス君は私の彼氏で、王子様で。
世界でたったひとりの大好きな人だ。

「アリス君、大好き!」
「ちょ、わ、あ!!」

抱えきれなくなった気持ちを伝えたくて、思い切りアリス君に抱きつく。
抱き止められなかったアリス君と一緒にその場に倒れ込んだとしても、私は彼に抱きつくことは止められない。
だって大好きだから!

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