ある日のこと。
いつものように桃林でスゥくんと過ごしていると、彼が唐突に私の手を握った。
「スゥくん? どうかしたの?」
「ううん。久々李の手ってどうしてこんなに気持ちいいんだろうって思って」
「へ? わっ」
スゥくんは私の手をじっと見つめた後、私の手とスゥくんの手をぴたりと合わせた。
私は驚いた。
同じくらいの手の大きさだろうと思っていたスゥくんの手は、私の手より一回りは大きかった。
そして、骨ばった指は無駄なものが一切ないように見えた。
男の子って凄い……いや、男の子が凄いというよりスゥくんが凄いというか。
自分との違いを唐突に見せられて、胸の鼓動が騒がしくなる。
「久々李の手、小さい」
「そ、そうかな!? スゥくんの手が大きいんだと思うけど……!」
動揺を悟られないようにしたかったのに、声が上擦る。
そんな私に、スゥくんはふにゃりと微笑むと、合わせた手のひらを少しずらして、そのまま指を絡めてぎゅっと握られる。
「ス、スゥくん!?」
「どうかした?」
「どうもしないけど、その……手が……そうしてるとスゥくんのこと撫でられないなーって」
嘘。
撫でるだけなら空いている手ですればいい。
このまま手を握られていると、私の心臓がどうにかなっちゃいそうだった。
スゥくんとはキスだってハグだってしてるのに、手を繋いだだけでもドキドキしちゃう私に呆れられないか少し心配になる。
「そっか」
彼は私の言葉を疑うことなく、手を離してくれた。
ほっと胸を撫でおろすが、手のひらからスゥくんのぬくもりが消えてしまって少しだけ淋しくなってしまう。
(私、いつからこんなに我侭になったんだろう)
触れていたいのに触れてほしくないなんて。
自分の気持ちを持て余しながら、スゥくんの頭に手を伸ばす。
サラサラの髪からぴょこんと生える猫耳。
それが私のモヤモヤを晴らしてしまう。
(ふふ、可愛い)
何度も何度も彼の頭を撫でる。スゥくんの表情は甘やかなものへと変わっていく。
「久々李」
「なに?」
「可愛いのは君だよ」
「えっ!?」
「でも、君が撫でてくれるのが好きだから。もっと撫でて。触って」
声に出してない心の声を当てられて驚く私に構わずスゥくんがおねだりしてくる。
(なんだか一生スゥくんには敵わない気がする)
そんな事を思いながら、彼の頭を撫でる。
私の膝に頭を乗せ、気持ちよさそうに目を細めるスゥくんは本物の猫みたいだ。
優しい風が私たちの頬を撫でる。
……一生敵わなくてもいいか。
ドキドキさせられっぱなしだけど、スゥくんと過ごす時間が大好きだから。
心の中で白旗を振っていると、スゥくんがおもむろに起き上がった。
「スゥくん、どうかし――」
私の問いは、スゥくんの唇によって阻まれる。
「キス、したくなったから」
「~~!!」
ふにゃりと、私の大好きな笑顔を浮かべたスゥくんはもう一度私へキスをする。
敵わなくてもいいから、猫のように気まぐれな彼のふれあいに早く慣れないと、私の心臓が壊れてしまうかもしれない。
本気でそう思った。