「シアンさん、朝です」
のっそりと起き上がるシアンさん。
最近は徹夜の回数も減り、一緒に眠る日が増えた。
一緒に起きる朝、彼の身支度を手伝うことはすっかり習慣となっていた。
ズボンを履き、シャツに腕を通す。そこでシアンさんの動きは止まる。
なので、ここからはシアンさんにかわって私が続きを行う。
「失礼します」
シアンさんの前に立ち、彼のボタンを下から留めていく。第三ボタンにさしかかったところで手がとまった。
(いつもここまで開けてるけど、留めてもいいのかしら)
ちらりとシアンさんの様子を窺う。
一番上まで留めたら窮屈だとか理由があるのかもしれない。
いつも聞けずにいる疑問を今日こそ訊ねようと口を開いた時だった。
「わかってる」
「きゃっ……!」
シアンさんはなぜか私を強く抱きしめ、腕の中に閉じ込めてしまった。
ついさっきまで何度も見つめていた逞しい胸板に頬を押し付けられ、胸の鼓動が跳ね上がる。
「あの、シアンさん……!」
突然の展開に戸惑いを含んだ声で彼を呼ぶ。
「心配するな、ここはお前の場所だ」
「……あの、シアンさん。
つかぬことをお伺いしますが昨日は何時ごろお休みになられたのですか?」
「明るくなる前には眠った」
「……なるほど」
どうやら寝不足のようだ。
以前までは徹夜が一週間続いても平気だと言っていた彼を思い出す。
(少しずつ普通の人に近づいてるみたい)
私自身、普通というものは分からないけれど。
神様みたいな存在が、私の前だけでは人になる。それがたまらなく嬉しい。
「寝直すぞ」
「え、今日は会議があるって」
「構わん」
シアンさんは私を抱きかかえたままベッドへと舞い戻ると、すぐに寝息を立て始める。観念した私は私の場所にぴたりと頬を寄せ、彼の寝息に耳を傾けた。