欲しいものはひとつだけ(誉那凜)

「誉那は何か欲しいもはある?」

俺にとって一番欲しいものが、そう俺に問いかける。
いや、もの扱いしたら彼女に悪いか。
けれど、何が欲しい? と聞かれたら俺は迷わず『凜が欲しい』と答えたくなる。
それくらい彼女が好きだ。
押し黙る俺に、何かを誤解したように凜が言葉を続ける。

「違うのよ? きちんと自分で選んでプレゼントは用意してあります。
だけど、誉那は何が欲しいのか気になっただけなの」
「プレゼント用意してくれたんだ」
「当然でしょ。だって好きな人の誕生日だもの」

彼女が俺の部屋に入る時、後ろに何か隠しているのは見た。ばっちり見た。
それが自分への誕生日プレゼントだろうなと思っても、確信できるまで触れていいものか悩んでいたのだ。

「俺はあんたが選んでくれるものならなんだって嬉しいよ」
「もう……それじゃ、誉那が本当に欲しいものかどうか分からないじゃない」
「俺が欲しいものなんて一つしかないけど」
「え?」

自分が用意してきたものは間違いだったのではないかと露骨に不安そうな顔をする凜が申し訳ないけど可愛くて、そろそろ限界だ。
彼女と俺の間には、タマ吉が座れそうなくらい距離があった。
それをぐっと縮める。

「俺が欲しいのは凜だよ」

彼女の目が見開かれる。
何か言葉を紡ぐ前に唇を重ね、言葉を奪ってしまう。
彼女の小さな舌を捕まえて深く絡ませると、彼女が俺の胸を叩く。きっと苦しいのだろう。
何度口づけを交わしても、俺たちは不器用で。
息継ぎする余裕もなく、お互いを求めてしまう。

「はっ……」

唇を離すと、凛が甘い声を漏らす。
ここは俺の部屋。誰もいないことは分かっているが、念のため周囲を見回す。
こんな可愛い彼女を他の奴に見られたくないし、知られたくないから。
凜は俺の頬を両手で挟むと、自分を見ろと言わんばかりに前を向かせる。
ほんのりと赤くなった頬に、胸の鼓動はどうしようもなく高鳴る。

「誕生日にプレゼントなんかしなくても……私はあなたのものよ」
「……っ、凛」
「誕生日おめでとう、誉那」
「ああ、ありがとう」

大昔に死んだ俺は今、最愛の人と生きている。
これからもずっと、俺たちは一緒だ。
それを誓うみたいに、今度は凜が俺にキスをしてくれた。

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