「ねえ、瀬名お姉ちゃん。きゃらべんってなあに?」
「え? キャラ弁?」
今日もお弁当を作って、廃墟で暮らす三人の元へ持ってきた。
おにぎりと唐揚げ、卵焼き、タコさんウィンナー、ブロッコリー、きんぴらごぼう等を詰めた定番中の定番といったおかずを詰め込んだお弁当を三人が食べていると廃寺くんがそんなことを言い出した。
「キャラ弁っていうのは、ご飯やおかずをキャラクターに見えるように作ったお弁当だよ。ほら、このタコさんウィンナーとか!」
「キャラクターに見えるように作る……?じゃあ、バウンサーのキャラ弁も作れるってこと?」
廃寺くんの言葉に思わず私の隣にいる監視者さんを見つめると、監視者さんはピコピコ、と嬉しそうに音を鳴らした。
「うん、多分監視者さんなら大丈夫だと思う」
私が頷くと、大人しく唐揚げをつついていた凝部くんが会話に割り込んでくる。
「えー!廃寺くんにだけキャラ弁作るの? だったら僕もキャラ弁がいいなー」
「お前は厚かましすぎるだろ」
「じゃあメイちゃんはキャラ弁じゃなくていいんだ?」
「……俺は瀬名の弁当が食べられるのならなんでも」
「ふうん。瀬名の手料理ならなんだって嬉しいよとか言っちゃって、あーやだやだ!」
「そこまで言ってないだろう!?」
いつものごとく凝部くんと陀宰くんがわいわいと小競り合いを繰り広げる。
クラスの男子を見ているようで、二人のやりとりを見ていると微笑ましい気持ちになる。
「じゃあ二人はどんなキャラ弁がいいの?」
「……猫」
「なにその可愛いリクエスト」
「うるせえ、じゃあお前はなんなんだよ」
「えー、僕はそうだなぁ」
「あんまり難しいのは作れないよ?」
監視者さんや猫だったらなんとかなると思うけど。
そこまで器用ではないので、難しいリクエストだと叶えられない。
凝部くんはわざとらしく腕を組み、しばし目を閉じる。
それをドキドキと見つめていると、ぱちっと凝部くんが目を開いた。
「じゃあハート」
「え?」
「は?」
私と陀宰くんの声が重なる。
凝部くんはお得意のウィンクを投げてから言葉を続ける。
「ヒヨリちゃんのラヴが欲しいからハートがいいなー!
ほら、新婚さんみたいじゃん?」
「うー--ん。新婚さんじゃないし」
「えー-、そこは気にしなくていいじゃん☆
廃寺くんやメイちゃんのリクエストより簡単だと思うんだけどな」
「それは……そうなんだけど」
「いい加減にしろ」
「あだっ」
見かねた陀宰くんが凝部くんの頭にゲンコツを落とす。
「メイちゃん、男の嫉妬は見苦しいよ。ハートを作って欲しいんだったら素直に言わないと☆」
「作るって一言も言ってないんですけど!?」
「えー---、俺はヒヨリちゃんの愛が欲しいのになぁ」
そう言って笑う凝部くんの目が、いつもと違って見えてなぜか胸の鼓動が跳ねてしまう。ドキドキしているのを隠すようにお弁当の残りを確認すると、いつの間にか唐揚げが全部なくなっていた。
「あれ!?唐揚げがない」
「うん、ボクが食べたよ」
「はあ!?まだ一個しか食べてないぞ!」
「僕も食べてないんですけど!」
「いや、お前はさっき食べてただろ」
「だってみんな忙しそうだったから食べていいかなって」
「「いいわけあるか!」」
「もう唐揚げで喧嘩しないで。明日いっぱい作ってくるから」
結局、キャラ弁よりも男の子には唐揚げが最強なのだ。
翌朝。早起きしてせっせと大量の唐揚げを揚げる私の姿を茅ヶ崎さんに目撃されるのだった。