ドキドキ(キョウヒヨ)

「今日はハンバーグを作ります」
「おおっ」
「しかもチーズ入りです!」
「おお~っ!」

私の言葉にキョウヤさんは一つ一ついいリアクションをしてくれるので、思わず笑ってしまう。
今日はキョウヤさんの家にお邪魔している。
ナナカちゃんとナツミちゃんのリハビリは順調だそうで、今日はお友達の家に遊びに行っているそうだ。
つまり部屋には私とキョウヤさんの二人きり。
期待と緊張で落ち着かないが、キョウヤさんはいつも通りに見えた。
キッチンに立って、家から持ってきたエプロンを身に着ける。
少しでも可愛いと思ってもらいたくて、友達と買いにいったエプロンだ。
お腹の前で紐をリボン結びした後、リボンの形をちょいちょいと直す。
キョウヤさんがどんな顔をして私を見ているか知りたいけど、照れくさくて彼の顔が見れない。

「えーと、冷蔵庫開けても大丈夫?」

逃げるように冷蔵庫の前に移動し、彼に問いかける。
返事の前に、逞しい腕が私を捕まえた。

「冷蔵庫は開けて大丈夫。お前は家族みたいなもんだし」
「あ、ありがとう」
「ヒヨリ」
「な、に?」

鼓動が早鐘を打つ。
背中に伝わってくるキョウヤさんの体温を意識しないのは難しい。
キョウヤさんは私をよく抱きしめてくれるが、それは愛情を分け合うというか、ハグという言葉がふさわしい。
だけど、今抱きしめられているのは、私を自分の腕の中から逃がしたくないという感情が伝わってきて……
きっと今の私は耳まで真っ赤になっているだろう。
キョウヤさんの吐く息が耳にかかると、否応なしに意識してしまう。
キョウヤさんの事は人としても異性としても好きだし、彼氏彼女なわけだし……
もしかしたら今日、私たちの関係は一歩進んでしまうかもしれない。
そう思ったらどうしようもなく胸が騒がしくなる。
けれど――

「そのエプロン可愛すぎ」
「……」
「可愛すぎてびっくりした」
「……ぷ」

キョウヤさんの口から出た言葉は、ついさっきの私が望んでいた言葉で。
ドキドキして、強張っていた体から力が抜けてしまった。

「え、笑うところだった?」
「ううん、キョウヤさんが褒めてくれたのが嬉しくて」
「なんだよ、それ。可愛すぎ」
「ふふ」

ようやく見えたキョウヤさんの顔は、私の大好きな笑顔で。
少し勇気を出して、彼の唇に自分の唇を押し付ける。

「キョウヤさん、大好き」
「――……っ! なんでいつも先越されるんだ?」
「それは同じこと考えているからかも?」

そうだったらいいな、と私が思っているだけだけど。
あながち間違いではないかもしれない。
顔を真っ赤にしたキョウヤさんが今度はキスを仕掛けてくる。
キスって不思議だ。
ドキドキして、胸が苦しくて、幸せで。
キスをするたびに好きという気持ちが溢れそうになる。

「好きだよ、ヒヨリ」

そう言って、もう一度唇が重なる。
思いが流れ込んでくるようなキスに、私は目を閉じる。

ハンバーグづくりはもう少し後になりそうだ。

 

 

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