猫じゃらしよりクッキー(朔唯)

「さーくやー」

クッキーが大量に入った缶を抱えながら、朔夜を探していた。
寮の中で自分が行ける範囲の場所は全て確認した。ちなみに朔夜の部屋も成宮くんに確認してもらったが不在だった。
後はどこにいるだろうかと考えながら寮の外に出る。すると、微かに猫の鳴き声が聞こえてきた。
といってもそれは特に珍しい事ではない。この寮に限らず、学校の敷地内や駅前の至る所に猫がいるのだ。
だから鳴き声が聞こえてきたって気にする必要はないのだが、今日に限って気になった。

(とりあえず鳴き声のした方に行ってみようかな)

寮の外側をぐるりと回り、目当ての猫を探す。猫の尻尾が見えた!!と思った次の瞬間、朔夜の背中が見えた。
足元をよく見ていなかったため、小枝をパキ、と踏んでしまう。朔夜はこちらを振り向き、驚いた様子もなく口を開く。

「ん? ああ、朝日奈か」
「朔夜!探したんだよ!」
「何も約束はしていなかったと思うんだが……」
「約束はしてなかったけど。ほら見て。クッキーいっぱいもらったの。一緒に食べよう!」

抱えている缶を得意げに見せると朔夜は「ああ、あれか」となんとも言えない表情を浮かべる。

「それは君一人に食べて欲しくて用意されたものじゃないのか?」
「別にそういうわけじゃないと思うけど?」
「……まぁいいか」

これ以上は何も言うまいと言いながら朔夜は視線を私から猫に戻す。朔夜は猫じゃらしを使って猫と遊んであげていたようだ。

「ずるい!私も遊びたい!」
「君もやるか?ほら」
「そうじゃなくて、私も朔夜と遊びたい!」

猫ばかり構ってもらえてずるいと訴えると、朔夜は一瞬驚いた顔をするがすぐにいつもの表情に戻る。

「君は猫じゃないだろ。猫じゃらしで遊ばないだろ」
「それはそうだけど……朔夜がじゃらしたら遊ぶかも?」
「やらない」
「ちぇー」

肩を落としながら朔夜の隣にしゃがみ込む。人懐こい猫のようで、すぐに私の脚に頬ずりしてくる。よしよしと撫でてやると朔夜が口を開いた。

「こうしてみてると時々猫が羨ましくなる。ごろごろ寝てるだけでエサもらえるんだものな」
「猫だって楽じゃないと思うけどなぁ。ねえ?」
「にゃあん」
「分かってるよ。ちょっと言ってみただけだ」

猫の機嫌を取るみたいに朔夜は猫の顎をちょいちょいと撫でる。それが気持ち良いのか、猫はうっとりとした表情になる。
私は猫から手を離し、缶の中のクッキーを一つ取る。そしてぐいっと朔夜の口元に押し付ける。

「んんっ!君は何を……!」
「ほら、朔夜だって私の隣にいるだけでクッキーもらえちゃうよ?凄くない?」
「……あのなぁ」
「ほら早く食べて」

あーんと口を開いてみせると朔夜は観念したように小さく口を開いた。そこにクッキーをつっこみ、私もクッキーを一枚口に放り込む。

「ん、やっぱり朔夜と食べると美味しい。ね?」
「まぁ……そうかもな」

結局猫を撫でながら、缶の中身が半分以上なくなるまでそこで二人でクッキーを食べ続けた。
立ち上がる頃にはお互い足がしびれていて、悶えながら寮の中へと戻っていく。
そんなくだらない時間も朔夜とだとやっぱり楽しいと思うのだった。

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