家事全般が得意で、ちょっとドジなところもある私の恋人。
家に遊びに行くといつも美味しい手料理でもてなされ、すっかり胃袋まで掴まれてしまっている。
「豪さん豪さん」
「なんですか、玲さん」
三時のおやつに出された豪さん特製のイチゴタルトを美味しく頂き、食後の紅茶で喉を潤した私は恋人の名前を呼ぶ。
すると優しい笑みを浮かべて、返事をしてくれた。
「豪さんの好きなものってなんですか?」
その陽だまりのような優しい笑みにハートを鷲掴みにされた私は聞きたかった事をぽろりと口に出してしまう。
ああ、もっとさりげなく質問したかったのに豪さんが可愛いから直球のボールを投げてしまう。
「俺の好きなもの? 玲さんですよ」
「うっ……!!」
直球投げたらホームラン打たれました。
思わず胸を押さえたくなるが、ティーカップを持つ指に力を込めてなんとか耐えるが、追撃の手は止まらない。「あ、でも」と豪さんは口を開き、照れくさそうに頬をかく。
「こんな言い方したら玲さんをもの扱いしているみたいで駄目ですね。一番…特別に大好きな人だからつい口にしちゃいました」
「~っ!」
直球を打ち返されたどころではない。胸のど真ん中に剛速球を投げられた。
赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて、勢いよく下を向くとティーカップを握りしめていた手に豪さんの手が触れた。
「玲さん、顔あげて?」
「……豪さん、絶対わざと言ってますよね?」「ふふ、どうでしょう。でも、全部本当の事だから」
握りしめていた指を解かれ、豪さんに持ち上げられた指先に、キスが落ちる。
海のように綺麗な青い瞳が、私を射抜く。
「ねえ、玲さん。玲さんの好きなものを聞いてもいいですか?」
そんな質問を投げかけられた私は完全に白旗を振るのだった。
結局、豪さんの好きなものは聞けず有耶無耶に終わってしまったが一つ言えるのは私は胃袋だけじゃなく、心まで豪さんにがっちり掴まれてしまっているという事だ。