庁舎の近くに車を停め、彼女を待つ。
『もうすぐ下に着きます』という彼女からのLIMEを読んで、思わず頬が緩む。
彼女とのデートのために山積みだった仕事も片付けてきたし、彼女が好きそうなお店の予約もしてある。
そして、もう少し一緒にいられるようだったら――という淡い期待を込めて、自宅もいつもより綺麗に片付けてきた。
簡単に言うと、浮かれている。かなり。
だって、半月ぶりのデートなのだ。
庁舎から彼女が出てくる姿がバックミラーに映ったので、俺は車から降りて彼女に向かって手を振ると、彼女もすぐに俺に気づいて、大きく手を振り返してくれた。
「羽鳥さん! お待たせしました!」
「玲ちゃん、お疲れ様」
「羽鳥さんもお疲れ様です。迎えにきてくれてありがとうございます」
駆け寄ってきた彼女は初めて見る服を着ていた。
もしかしたら今日のために新調したのかな、と考えて笑みが零れる。
服装も可愛いけど、髪型もいつもと違う。
普段、彼女は髪をおろしているか、ハーフアップくらいしかしない。
だけど、今日は頭の後ろで髪を束ね、ぴょこんと揺れている。
「今日、珍しいね?」
そう言いながら、俺は髪の後ろを指さすと、玲ちゃんはふにゃりと表情を緩める。
「久しぶりのデートなんで、羽鳥さんの真似しちゃいました」
俺を真似してポニーテールにしたという彼女の可愛さにくらっとする。ここが自分の部屋だったらそのまま押し倒していただろう。
「うん、可愛い。良く似合ってる」
「ありがとうございます」
照れ笑いを浮かべた玲ちゃんを横目に助手席のドアを開く。
「さあ、どうぞ」
お礼を言いながら、車に乗り込んだ玲ちゃん。
車に乗り込む瞬間に、彼女の白いうなじが視界に入る。
「玲ちゃん」
彼女のうなじにそっと触れ、そのまま唇を寄せると玲ちゃんの体がぴくりと震える。少しきつく吸い上げ、唇を離す瞬間にポニーテールを解いてしまう。
「羽鳥さん……?」
「可愛い君を独り占めしたくなったって言ったら、笑う?」
俺のためにお洒落をして、俺のために髪を結い上げて。
そういう可愛くて仕方ない君を他の誰かの目に触れさせたくないと思ってしまった。
玲ちゃんの手が伸びてきて、俺の頬を両手で挟むと、そのまま引き寄せられる。
柔らかいものが唇に押し付けられ、離れた後にそれが玲ちゃんの唇だったと認識する。
ほんのりと頬を赤く染めた玲ちゃんの瞳に、俺が映りこんだ。
「笑いませんよ。それに……私も羽鳥さんを独占したいって思ってますから」
「……玲ちゃんには敵わないなぁ」
嬉しい言葉を返され、たまらない気持ちになる。このままもう一度唇を重ねてしまいたいけど、我慢が出来なくなりそうだからぐっと堪える。
「とりあえず、移動しようかな」
「あ! そ、そうですね!」
ここがどこだか思い出したのか、玲ちゃんは慌てて俺から手を離す。
助手席のドアを閉め、運転席に乗り込むとシートベルトを装着する。
「ねえ、玲ちゃん」
「なんですか?」
「今日は玲ちゃんの好きそうなお店を予約してあるんだ。
それが終わったら……俺の部屋で珈琲でも飲まない?」
「…………そ、れは」
意味を理解した玲ちゃんの顔がじわじわと赤くなっていく。
玲ちゃんが頷いた瞬間、やっぱり我慢しきれなくて唇を奪ってしまう。
久しぶりのデート。綺麗に片付けてきた部屋は無駄にならなそうだ。