いつまでも一緒(糸遠+カンちゃん)

ある日、突然家族が増えた。
二人きりだった家の中が少し……いや、かなり?騒がしくなった。

「ああ、今日の気分は目玉焼きではなくスクランブルエッグなんだ。
これは糸遠にあげよう」
「もう! 我侭ばっかり言ってると歌紫歌の分は用意しないからね!」
玻ヰ璃はフライパンを振りながら、歌紫歌に言い返すが、彼の要望通りスクランブルエッグを作り始める。
俺は玻ヰ璃が作ってくれた焼きたての目玉焼きとトースト、サラダ、オニオンスープを食べ始める。本当は玻ヰ璃を待っていたいけど、「冷めちゃうから!」と言われるのだ。
一人で少し先に食事を始めると、歌紫歌の腕からぴょんと降りたカンちゃんが俺の前にお行儀よくお座りする。
「きゅい?」
「カンちゃんもご飯食べようね~。ちゃんとカンちゃんの魚、食べやすいように切ってあるよ」
「きゅい~!!」
カンちゃんの朝食用に用意していたお魚を片手で持ち、カンちゃんに差し出すと、カンちゃんは嬉しそうに食べ始める。
「カンちゃん、美味しい?」
「きゅ!」
可愛らしい返事に俺はだらしなく笑みを浮かべた。

 

俺にとって、家族は減るばかりだった。
四人暮らしだったのに、両親が他界し、俺と玻ヰ璃の二人きりになった。
次に家族の人数が変わる時は、玻ヰ璃がお嫁に行く時だろうとひそかに覚悟していた。

そんな俺たちの前にある日現れたのが歌紫歌とカンちゃんだ。
カンちゃんは歌紫歌のペットだ。
けれど、いつも歌紫歌が連れて出かけるわけではなく、むしろ家に残っている方が多い。
そんな時、いつもカンちゃんは俺の傍を離れない。
お腹を見せて甘えられるともう駄目だ。
可愛くて仕方なくて、おなかを撫でまわし、その魅惑の体に顔を埋めてしまう。
愛らしい鳴き声をあげるカンちゃんに日々癒されるのだ。

今日の時計の修理の合間にカンちゃんを撫でまわしていると、玻ヰ璃がやってくる。

「本当、兄さんはカンちゃん大好きだよね」
「こんなに可愛いんだから誰だってカンちゃんの事好きになっちゃうだろ?」
「きゅいー!」
「それは……まぁ、認めるけど」
玻ヰ璃は悔しそうな顔をしながら答える。が、カンちゃんが愛らしく小首をかしげると途端に頬を緩める。
兄妹揃ってカンちゃんにめろめろだ。

(でも歌紫歌が出ていく時は、カンちゃんも一緒なんだよなぁ)

それを思うと少し……いや、大分寂しい気持ちになる。
でも、主人といるのがカンちゃんの幸せだろう。
そう思えばいつかの別れだって、悲しんではいられない。

「玻ヰ璃、歌紫歌とはどうなの?」
「えっ……!?な、なに?兄さん、急に……!!」

俺の自慢の妹は、可愛らしく、素直な良い子だ。
そして、嘘をつくことがへたくそだ。
玻ヰ璃が歌紫歌の事を気になっているのはなんとなく分かる。
だって玻ヰ璃が生まれてからずっと一緒にいるのだ。
それくらい嫌でも分かってしまうだろう。
ちょっと焦げたスクランブルエッグは自分で食べて、綺麗に仕上がったスクランブルエッグをお皿に盛り付ける玻ヰ璃はいつもより楽しそうに見えたから。

「もしも歌紫歌がずっと家にいてくれたら、カンちゃんとずっと一緒だなぁって」
「そ……そうだね。そうなったら、良いかもね」「きゅい!!」
「カンちゃんもそう思う?」
「きゅー!」

カンちゃんをぎゅっと抱きしめると、玻ヰ璃は少し呆れた顔をする。

(カンちゃんとずっと一緒にいれたら幸せだけど、兄さんはお前が好きな人と結ばれることが一番幸せだよ)

いつか、玻ヰ璃が胸の内を伝えてくれたら言おうと思っている。
その日が早く来てほしいような。まだ来てほしくないような。
少し騒がしくなった日常に慣れ始めた俺は、この日常がずっと続けばいいと願っているのだ。

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