「ねえねえ、ヒヨリちゃん。この状態でいつまでいればいいわけ?」
「んー、そうだなぁ。いつまでにしようかな」
凝部くんが言う『この状態』というのは、いわゆる膝枕だ。
今日は学校もお休み。
凝部くんの部屋に遊びに来ているのに、いつまでもモニターとにらめっこをしている凝部くんを見かねて、彼を呼び寄せたのだ。
凝部くんの長い髪にゆっくりと指を通す。
さらさらと零れる髪をちょっと羨ましく思いながら、それを繰り返していると凝部くんの耳がほんのり赤くなっている事に気づいた。
「もしかして照れてる?」
「はあ? これくらいで照れるわけないじゃん」
「そうかなぁ」
「そうだけど?」
私の視線に気づいたのか、凝部くんは耳を手で隠してしまう。
「ねえ、凝部くん。その手どけてほしいんですけど」
「お断りしまーす☆」
そう言って凝部くんは不満げな私の顔を見ないように目を閉じる。
そっちがそのつもりなら仕方ない。
体を屈め、耳元を隠している凝部くんの手に唇を押し当てる。
さらりと私の髪が落ち、彼の頬をくすぐる。
「ちょ、ヒヨリちゃん。何してるの!?」
「うーん、なんでしょう☆」
「そういう時に僕の真似やめてよね」
「似てた?」
「全然」
軽口をたたき合いながらも私は凝部くんにキスを落とすのをやめない。
手の甲に唇を何度も押し付けたから、凝部くんの手の甲はところどころグロスの色で赤くなっている。
その部分をぺろりと舐めると、驚いたのか、凝部くんの指に隙間が生まれる。
「ちょ……!」
凝部くんの制止の声を無視し、そのまま指の隙間に舌をねじ込み、隠れている耳朶をちろちろと舐めると体がびくんと跳ねた。
ちょっとだけ勝ち誇った気持ちになったのもつかの間。
私の視界は反転し、次の瞬間には天井を見上げている。
天井と私の間に、凝部くんがにゅっと顔を出す。
「あんまり俺のこと煽ると食べちゃうけど?」
本気だと言うように噛みつくようにキスをしてくる。
だけど、それは最初だけで、後は優しいキスに変わっていく。
ちゅ、ちゅ、とリップ音を響かせながら、気づけばキスに夢中になっていく。
何度キスをしただろうか。
ようやく離れた唇の端を凝部くんはぺろりと舐める。
そこでようやく凝部くんとしっかりと目があった。
「やっと目合った」
「……は?」
「だって今日、せっかくの休みなのに凝部くんは全然こっち見ないし。
膝枕しても明後日の方ばっかり見てるんだもん」
ようやく彼の瞳に自分が映った事を喜ぶと、凝部くんの顔はみるみる真っ赤に染まっていく。
「ふふ、私の彼氏は可愛いなぁ」
もう逃がさないように凝部くんをぎゅっと抱きしめると耳元で盛大にため息をつかれる。そして、しばらくすると観念したかのように私をぎゅっと抱きしめ返してくれた。
ようやく楽しい二人だけの休日が始まる。