ドライブデートに行かない?と羽鳥さんに誘われたある日の休日。
ようやく乗りなれた羽鳥さんの助手席。
どこに行くんだろうとワクワクした気持ちは、同じように楽しい旅路に向かう車たちによって、ほんの少し邪魔されていた。
「さすが大型連休、道が混んでますね」
「そうだね。大丈夫? 玲ちゃん。退屈してない?」
「全然退屈なんてしてないですよ。羽鳥さんこそ運転疲れませんか?」
「これくらい全然平気だよ。隣に玲ちゃんがいるから疲れなんて吹っ飛んじゃうよ」
そう言って羽鳥さんはパチンとウィンクする。
アイドル以外でこんなに上手にウィンクできるのは羽鳥さんくらいじゃないだろうかと思うほど綺麗なウィンクに心臓を撃ち抜かれる。
「多分もう少ししたらこの渋滞、抜けると思うからもう少しだけ我慢してね」
「それは全然!」
「あ、そうだ」
羽鳥さんは何かを閃いた顔をすると、こちらに手を伸ばし、私の指に自分の指を絡め、きゅっと繋いでしまう。
「えと、羽鳥さん……?」
「せっかく玲ちゃんといるんだし、触りたくなっちゃった。駄目?」
「駄目、ではないんですけど……! 運転中だから危ないんじゃ?」
「のろのろしか進まないから大丈夫だよ。ね?」
繋いだ手に少し力を込めて握られる。
正直に言えばせっかく一緒にいるんだから羽鳥さんに触れたい。
ちらりと羽鳥さんを見つめると、優しい表情で私が頷くのを待っていた。
そんな顔をされて、断れるような強い意志は持っていない。
「渋滞の間だけ、ですよ?」
「うん。ありがとう、玲ちゃん」
ようやく私が握り返すと、羽鳥さんは嬉しさを隠しきれないといった顔で笑った。
ああ、ずるいなぁ。そんな顔されたらますます好きになってしまう。
「羽鳥さんって私の事だいすきですね」
「うん、そうだよ。玲ちゃんの事すっごく好き。
玲ちゃんも俺の事だいすきだよね?」
「ふふ、ばれてましたか」
「大好きな玲ちゃんのことだからね」
そう言って、見つめ合い、二人でくすくすと笑う。
さっきまでちょっとだけ憂鬱だった渋滞が、もうしばらく続いてくれたらいいなとこっそりと思うのだった。