「クライナー、おいで」
「わふっ」
司さんがクライナーを呼ぶと、クライナーは自分の寝床から出てきて、私たちの前にごろんとおなかを見せて寝そべる。
「ふふ、可愛い」
「でしょう。さあ、クライナー。ブラッシングをするから元の体勢に戻りましょう」
司さんはクライナーのおなかを数回撫でてやると、今度はごろんと反転したクライナーの背中を犬用のブラシで梳いていく。
クライナーは短毛な犬種だけど、それでもブラシには黒い毛が集まっていく。
「意外と抜けるんですね…!」
「今ちょうど夏毛に変わる時期ですからね。こうしてまめにブラッシングをしてあげる必要があるんです」
「なるほど……! でも、夏用の毛でも暑そうですよね、やっぱり」
炎天下で、毛皮を身にまとっているのはとても暑そうだ。想像するだけでぐったりしてしまいそう。
「玲さんの言う通り、夏毛になったって暑いものは暑い。飼い主が十分に気を付けて対策をしてあげないといけないんです」
司さんにブラッシングをされているクライナーはとても気持ちよさそうな顔をしている。ぱたぱたと揺れるしっぽが喜びを表現していて、可愛らしい。
それに司さんもとても優しい表情をしている。
思わずにこにこと二人を見つめていると、ブラッシングを終えた司さんが私の方を向いた。
「どうかしましたか?」
「大好きな二人を見てて、幸せな気分になってました」
「それはずるい。俺も同じような気分になりたいです」
そう言って、司さんは立ち上がると私の位置に移動する。
そして、私とクライナーを見つめると満足げに頷いた。
「これは幸せな気分になりますね」
「でしょう?」
得意げに頷いてみせると司さんは小さく笑う。
「ところで玲さんは夏バテ、大丈夫ですか?」
「そうですねぇ……最近暑いからちょっと食欲涌かないなぁって日はありますね」
「それはいけない。そういう時におすすめの食べ物がありますよ」
「え、なんですか?」
「夏用のカップ麺です。なんと氷を入れて食べれる優れものです」
「ああ、CMで見た事あります!」
カップ麺に氷を入れて食べるのはなぁ……と思っていたんだが、司さんの反応を見るとちょっと気になってくる。
「特にトマト味のカップ麺に氷を入れるのがおすすめです。冷製パスタをカップ麺にしたような味です」
「あぁ……司さんのセールストークが上手だから段々口の中がカップ麺になってきました」
ちょうど小腹の空いてくる時間帯だし。
思わずお腹を押さえると、司さんがソファから立ち上がる。
「玲さんが夏バテしたら困りますからね。食欲があるうちに美味しく頂きましょう」
「しょうがないですね、司さんが夏バテしたら困りますしね。食べちゃいましょうか」
そう言って顔を見合わせ、二人で同時に笑い出す。
私にとって、司さんといる事が夏バテに一番効果的のようだ。
お湯を沸かすべく、二人でキッチンに行く姿をクライナーがしっぽを振りながら見守っていた。