今日は休日。ウルリクと過ごす約束をしている。足取り軽くウルリクが待っているであろうソファへ近づいたとき、不幸が起きた。
「わっ!」
床のでっぱりに爪先を引っかけた私は勢いよくその場で転倒した。
「うわっ、何もないところでなにやってんだよ」
「何もないわけではない! そこにでっぱりがあって…!」
少しあきれた顔をしたウルリクは私のすぐ傍まで来ると私の足首に触れた。
「ーっ!」
「腫れてる」
「この程度どうってことない…!」
「はいはい。そういう強がりは今どうでもいいから」
はーっと息をはいてから、ウルリクは倒れこんだままだった私の腰と膝裏に手を回し、横抱きにしてぐっと持ち上げた。
「なっ…!」
「へぇ、思ったより軽いじゃん」
「それは筋肉が足りないということか?」
「軽いっていわれてなんでふくれてんだよ、馬鹿だな」
そう言いながらウルリクはなんでもない様子で廊下を歩く。私は抱き抱えられ、密着している部分がやたらと熱くて、ついでに鼓動もやたらと早い。
私の部屋の前まで来るとウルリクは足を使って、部屋のドアを開けてしまう。
「行儀が悪いのではないか…?」
「別に誰も見てないし」
「私が見ているのでは?」
すたすたと部屋のなかを歩き、ベッドの上に私を下ろすと部屋に置いてあった救急セットに手を伸ばす。
「私だってウルリクを持ち上げれる!」
「なんで張り合おうとするんだよ!持ち上げようとなんてするなよ、馬鹿!」
「うっ…仮にも私は護衛なのに」
「あんたが護衛してんのはエルトでしょ。だから僕には甘えていいんだよ、それが…」
「それが?」
ウルリクはなにかを言いかけたのに、口を閉ざして頬を赤らめた。
「…それくらい察しろよ」
「すまない。今の流れからどうやって察すれば良かったのか…」
ウルリクに申し訳なくて、しゅんと肩を落とす。するとウルリクが赤い顔のまま、私との距離を一気に詰めた。
その次の瞬間、一瞬だけ唇が重なった。
「ーっ!」
「キルスは僕の恋人なんだから、甘えたっていいんだって言おうとしただけ!二度と言わないからちゃんと覚えておくこと!」
ウルリクはすぐさま距離を正し、私の足首に包帯を巻いていく。
「ウルリク」
「…なに?」
「私はウルリクを好きになって、幸せだな」
恋人だから甘えてもいいだなんて、そんな風に言って私を気遣ってくれる優しい人。
幸せを噛み締めてたら自然と頬が緩んだ。
「本当あんたって…」
幸せそうに笑う私を見て、少し呆れたように、だけどウルリクも幸せそうに小さく笑った。
「…さっきの、胸がドキドキしたから足が治ったらウルリクにもしてあげよう」
「だから張り合おうとするなよ!」
そんな風に言い合いするのも今の私にとっては幸せみたいだ。