想いというものは、口にすると決して減るものではなく、逆に大きくなるものだと教えてくれたのは湫だ。
「湫、お待たせ!」
仕事終わり、湫と待ち合わせをしていた。定時少し前に急遽対処しなければならない仕事が舞い込み、大急ぎで片付けた後私は湫の元へと走った。
待ち合わせ場所で彼は落ち着かない様子で周囲を見回していて、駆けてくる私を見つけて彼はぱあっと顔を輝かせた。
「お、おう! 待ってた!」
「ふふ、ごめんね。待たせちゃって」
今日は慌ただしい一日だった。きっと湫と付き合う前の私なら家に帰るなりソファで横になっていただろう。
「じゃあ、行くか」
「うん!」
湫の顔を見ているだけで疲れが吹っ飛ぶというか、元気を分けてもらった気がする。
ふと、湫の手が私の手にちょんと触れる。が、その手は私の手を掴む事なく離れ……でもまた手がぶつかる。
(これはもしかして……?)
湫を見ると彼の顔は真っ赤だ。手を繋ごうと頑張っているが、なかなか実行できないというところだろうか。
(可愛い……)
湫はかっこいいと言われるのが好きだが、彼をついつい可愛いと思ってしまうのは許してほしい。男の人に可愛いだなんて思った事なかったんだから湫は特別なのだ。
「ねえ、湫」
「な、なんだ?」
「手、繋いでくれたら嬉しいな」
お願いしてみると湫は驚いたように目を見開き、慌てて私の手をぎゅっと握った。
可愛いな、と思っていても湫の手私の手よりも大きくてごつごつしていて、男の人の手だった。
その手からまるで伝染するみたいに私の顔も赤く染まる。
「ふふ」
嬉しくてつい笑ってしまうと湫はふてくされた顔をする。
「かっこわるかったか?」
「ううん、そんな事思ってないよ。湫の事、大好きだなぁって思ってた」
「!」
湫はいつも私に好きだと伝えてくれる。
誰かを好きになって、その想いを口にする。
そうすると自分の中にあるその想いがより大きく確かなものへと変わっていくような気がする。それを教えてくれたのは湫だ。
だから私も彼に自分の想いをたくさん伝えていきたいなって思う。
「オレもしのが好きだ、大好きだ!」
これから先もこうやっていつまでも手を繋いで、湫の事を好きだって伝えていきたいな。
そう思いながら今日も伝えてくれる愛の言葉を、私は笑顔で受け止め、彼の手を握り返した。