メイドの日(菅玲)

日曜日の昼下がり。
昨日の夜は夏樹くんの家に泊まり、今日は朝からニチアサを二人で見て、簡単にお昼ごはんを済ませて、ソファに互いにもたれかかるようにしてだらだらと過ごしていた。
すると、夏樹くんが何かを思い出したのか「あ」と呟いた。
「そういえば、今日は何の日か知ってる?」
「今日? 母の日だよね?」
「それもあるだろうけど、違うなぁ」
日付を確認すると五月十日。何かの記念日だっただろうかと考えてみるが、全く心当たりがない。
うーん、と首をひねると夏樹くんが私の肩を抱き寄せて、スマホの画面を見せた。
「今日はメイドの日だって」
「メイドの日? ああ、語呂合わせだね。なるほど。て、え!?」
夏樹くんが見せてくれた画面にはメイド服に身を包んだ夏樹くんの姿があった。思わずスマホを掴み、まじまじと見るがなんというか……似合っているようないないような。
「ちょっとスカート丈短すぎない?」
「あはは、やっぱり? 俺もそう思ったんだけどさ、ド〇キで売ってたメイド服だからそういうのしかなくて」
「あーなるほど」
たくましいおみ足を惜しげもなくさらすのならすね毛は剃ってほしい気もするが、これのためにわざわざすね毛を剃られるのも嫌だったので何も言わないでおく。
「で、この写真を見せた理由わかる?」
「……分かりたくない気がする」
「さすが玲。俺の事よくわかってるな~! 今日メイドの日じゃん? せっかくなら玲にメイド服着てほしいなって思い立ったんだけど」
「いや、分かってない。分かってません」
ぶんぶんと首を横に振るが、夏樹くんがぐりぐりと頭を肩に押し付けて甘えてくる。この甘え方に私はとても弱い。
「ね、玲。お願い」
ちょっと低めの声でささやかれたら、私はもう頷くしかなかった。

そんなわけで、夏樹くんがクローゼットの奥底に仕舞い込んでいたメイド服を引っ張り出してきたので、脱衣所に引きこもってメイド服を身に着けた自分を鏡で見てため息をついた。
(いやいやいや、メイドの日だからってなんでメイド服着る事になったんだっけ?)
うっかり流されたつい数分前の自分が憎い。やっぱりスカート丈は短くて、膝上二十センチくらいだ。くるっと一回転をすれば下着は丸見えになるのではないかと心配になる。
そして、胸元はなぜか大きく開いており、ちょっとかがめば谷間が見えるだろう……こんなメイドさんがいたらセクハラで職場を訴えれるなと心底思った。
「れーい? 着れた?」
わくわくした声が聞こえてきて、危うく心臓が止まりそうになる。
「……着れました」
脱衣所のドアを少しだけ開けて顔を見せると、夏樹くんはめちゃくちゃ良い顔でニコニコしていた。
「出てきて見せてほしいなぁ」
「……笑わない?」
「笑わない」
「セクハラしない?」
「セクハラはする」
「……!」
「あー、冗談冗談。玲、お願いだから出てきてよ」
ドアをぴしゃっとしめようとしたが、夏樹くんが閉まらないように手で押さえているようだ。
しばしの睨み合いをしてから、私はようやくドアを開けた。
「おお! すっげー似合ってるよ、玲」
「恥ずかしいからもういい?」
「ええー、今見たばっかりじゃん」
「そうだけど……! あんまり動くと下着が見えそう」
スカートが翻らないよう懸命に抑える。
「それは煽ってると思っていいんだっけ?」
「は!?」
夏樹くんはそう言うと、私の手と背中を壁に押し付けて、唇を塞いだ。
ちゅ、ちゅとわざとらしいリップ音をさせながらキスは深いものへと変わっていく。夏樹くんが私の足の間に自分の足をいれると、ぐりぐりと敏感な部分を刺激してくる。
「はっ……、夏樹く、ん」
ようやく唇が離れる頃には私も夏樹くんも完全にスイッチが入っていた。
夏樹くんはぺろりと唇の端を舐める。その舌が赤くて、いやらしくて、なんだか見てはいけないものを見てしまった気持ちになった。
「ね、メイドさん。ご奉仕、してくれる?」
初めからそれが狙いだっただろうと言いたかったが、私もまんざらではなくて。
返事の代わりに離れたばかりの唇を、もう一度強く押し付けるのだった。

良かったらポチっとお願いします!
  •  (9)