「ねえ、ヴィルヘルム。これどうかな?」
久しぶりに街へ買い物。
私は彼の腕を引いて、様々なお店を巡っていた。
ヴィルヘルムは私に意見を求められる度に眉間に皺を寄せる。
「いいんじゃねえの?」
「もう、そればっかり」
「俺に女物の事聞くなよ、わかんねえよ」
困っているのも分かっている。
だけど、せっかく一緒に回っているんだから彼が気に入るようなものを身につけたいのだ。
そういう気持ちを彼に理解して欲しいというのはなかなか難しい事も分かっているけど。
「眉間に皺」
人差し指でヴィルヘルムの眉間をぐりぐりと押してやると私の手を払う。
自分で改めて眉間をほぐしてから私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「・・・さっきの奴の方が良いとおもう」
「じゃあ、あっちにするね」
「おう」
ごめん、と謝れない代わりに私の頭を撫で回すのは癖のようなものだ。
悪いと思っている時ほど乱暴に私の頭を撫でる。
それに気付いてから、私は彼をあまり強く怒れなくなった。
「でもヴィルヘルム」
「ん?」
「あんまり髪、ぐちゃぐちゃにしないで欲しいの。
せっかく今日は髪、頑張ってセットしたのに」
「あ、悪い。道理でさわり心地良いと思った」
「・・・もう」
甘えるように彼の腕に自分のそれを絡める。
私たちの休日はいつもこんな感じだ。
買い物も終わり、遅めの昼食を済ませると自然と足は森へ向かっていた。
街で買い物をするのも楽しいけど、人がいない空間でゆっくりしたくなる。
人混みは息がつまる、とヴィルヘルムが以前からぼやいているのが私も森で過ごす時間が増えるようになってから分かる気がした。
「あー、やっぱり落ち着く」
「付き合ってくれてありがとう」
いつもの木陰にたどり着くと、背中を思い切り反らす。
寄り添うように隣に座り、私は膝を抱えた。
「なあ、ラン」
「なに?」
「手、出してみろ」
言われるがまま右手の平を彼に差し出すが、彼は私の髪に触れた。
「ヴィルヘルム?」
「おう、確認しただけ。ほら」
そう言って私の手の平にそっと置いた。
それは小ぶりだけど、リボンのような形に蒼い装飾が散りばめられたバレッタだった。
「どうしたの、これ」
「さっきの店でお前に似合いそうだと思ったから買った」
「だって、聞いてないよ!」
「今言っただろ」
「そうだけど!」
「なんだよ、嬉しくないのかよ」
「嬉しいに決まってるでしょ!」
いつも買い物に付き合ってくれるとき、面倒そうにしてるのに。
それなのに、私に似合うと思ってこっそり買ってくれてるなんて嬉しくないわけがない。
「ヴィルヘルムのばか」
悪態をつきながら彼に抱きついた。
そして、彼がいつも私に謝罪の言葉を口にせず撫で回すように、彼の頭を撫で回した。
「なんだよ、それ」
「・・・嬉しい、ありがとう」
「おう」
優しく私を抱き寄せてくれるから、彼の髪を優しく撫で返した。
次のデートのときは、彼のものを買おう。
そしてその時は今日もらったバレッタをつけていこう。
それを見て、ヴィルヘルムがなんていうかはその時のお楽しみ。