心寄せて(リュカセレ)

「……あ」

ベッドのシーツを握りしめる私の手を、リュカさんの手がそっと包み込む。
それだけで私は逃げ出したい衝動に駆られてしまう。
好きな人に触れたい。触れられたい。
そういった衝動は私の中にも存在しているけれど、未だに羞恥心の方が勝ってしまうのだ。

「リュカさん、あの……」
「ふふ、耳まで真っ赤になってますね」
「!」

リュカさんはそう笑って、もう片方の手で頬にかかる私の髪を耳にかけ、ゆるりと耳朶をなぞった。

「リュカさん……今日はもう、」
「だめです。練習したいと言ったのはセレスくん。君だったはずですよ?」
「それはそうなんですけど……」

リュカさんと想いが通じ合って、恋人同士になってしばらく経った。
同じ家で過ごしているというのに、私はいまだにリュカさんと触れ合うことに慣れれずにいた。
彼を男性として意識すると胸の鼓動が早鐘を打ち、全身の血が沸騰したみたいに熱くなる。
今だって私の手を包み込む手は、私のものと比べて一回り以上大きくて、すっぽりと覆われている。
物腰が柔らかいからだろうか。それとも教師という仕事柄だろうか。
普段の彼からは異性を色濃く感じることはない。
だから手が触れるだけでも逃げ出したくなるのかもしれない。
私にもっと人と触れ合う経験があれば、こんな事にはならなかったのだろうか。
恥ずかしさを押し殺して、正面にいるリュカさんの様子をうかがう。
あとはもう眠るだけなので、部屋の中の明かりは消されている。
カーテンの隙間から差し込む月明りだけが、私たちに光を与えてくれている。
そのはずなのに、どうしてだろう。リュカさんがキラキラと輝いてみえるのだ。
見間違えだろうかとぎゅっと目を閉じては開き、彼を見つめる。それを何度か繰り返していると、リュカさんがくすりと微笑んだ。

「もう練習の時間は終わりにしてもいいですか?」
「え?」

私が小首を傾げるのとほぼ同時にリュカさんが私の腕を掴んで引き寄せた。
彼の胸に飛び込むような恰好になり、驚きに目を瞬かせると、今度は私の頬を両手で優しく包んで、彼が上を向かせた。

「リュカさん……」

やっぱり。
月明りのせいではなくて、リュカさんがキラキラ輝いて見える。

「そんな顔で見つめられると、心臓が持ちません」
「え、そんな……!?」

一体どんなひどい顔で彼を見つめていたのだろうか。ついさっきまで沸騰しそうなほどの熱さを感じていたはずなのに、一気に血の気が失せた。

「すみません、言葉が足りませんでした。君が可愛すぎるんです、セレス」

そう言って、熱を与えるように唇が押し付けられる。

「リュ、……ぁ」
「セレス、可愛い私のセレス……」
「んッ……」

いつの間にか指と指は、絡め合うように繋がれ。服越しに触れ合っている身体はお互いの鼓動も分かち合う。

私にもっと人と触れ合う経験があったのなら、なんて考えは間違いだ。
だってリュカさん以外と触れ合ったとして、きっと私はこんな風にならないから。

だから。

「リュカさん、好きです」

私の精一杯の想いを、目の前の愛おしい人に伝えるように、私からも唇を求めた。

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