触れて、キスして、もっと(マモヒヨ)

手を繋ぎたい。
そう思うけれど、彼が自由に出来る手を私が塞いでしまって良いんだろうかとためらってしまう。
それは外を歩いている時や、スーパーで買い物をしている時だったり。
だから、家の中で寄り添っている瞬間が一番安心する。

「ヒヨリさん? どうかしましたか?」
「マモルさんの手、温かいなーって思ってました」
「部屋、寒いですか? 暖房をつけましょうか」
「そこまでじゃないから大丈夫です。ありがとうございます」

繋いでいる手にそっと力を込める。
すると、マモルさんもきゅっと握り返してくれる。
でも次の瞬間、彼の手は私の手に添えるだけのものに変わってしまう。

「もしかしてマモルさん……手を繋ぐの嫌いでしたか?」
「え?」

以前の私だったら、どうして恋人同士って人目もはばからずイチャイチャするんだろうって不思議に思っていた。
恋をしたら、いつでも好きな人に触れたくなるなんて知らなかった。
とはいえ、さすがに私は人目が気になるので、外ではくっついたりはしないよう気を付けている分、二人だけになるとマモルさんに触れたくなる。
でも、もしかしたらマモルさんはそうじゃないのかも、と今に至るまで思いつかなかった。

「すみません、ベタベタして……! 離します」
「待ってください」

繋いだ手を解こうとすると、マモルさんが私の手を強く掴んで、指と指を絡めた。
驚きのあまりマモルさんの顔を見つめると、彼は頬を赤らめ、柔らかく微笑んだ。

「手を繋ぐの、僕も好きです。
ただ、あなたがいつでも離せるようにと強く掴まないように気を付けていただけなんです」
「そう、なんですか?」
「ヒヨリさんの手は、小さくて柔らかくて気持ちいいですから」

嘘のない声が、甘く響く。
その時、耳にかけていたマモルさんの髪がはらりと落ちた。
きっとマモルさんの手を離すのがこの場での最適解だろう。
でもせっかくマモルさんが手を離すのを拒否してくれたのだ。私も離したくなかった。

「マモルさん、触りますね」

だから自然と空いている手が伸びていた。
マモルさんのサラサラした髪をすくい、そっと耳にかける。

「ありがとうございます、ヒヨリさん」
「マモルさんの髪、サラサラしてるから羨ましいです。
私の髪は毎朝寝癖と戦うんですけ――」

思ったよりも距離が近くなっていた。
すぐそこにあるマモルさんの瞳。
ほんのりと赤くなった頬や耳から目を離せない。

「ヒヨリさん」

多分、私の顔も赤くなっていると思う。
もしかしたら繋いだ手からマモルさんの熱が流れ込んできてるのかも、なんて都合の良い事を考える。

「キス、してもいいですか」

マモルさんの言葉に顔に熱が集まる。

「~~っ、それは聞かなくてもしていいです」
「本当に?」

私の顔を覗き込むマモルさん。ついさっきかけたばかりの髪が、耳から落ちる。
今は、マモルさんの髪に手を伸ばすよりもキスがしたい。そう思った。

「マモルさんとだったら……いつでも嬉しいですから」
「僕もです」

一緒で嬉しいですとマモルさんは可愛いのに、どうしようもなくかっこよくて。
何度もキスをしたのに、何度だってドキドキしてしまう。
繋いだままの手を引き寄せられ、私はマモルさんの胸にしなだれかかる。
それがすぐに縋りつくような恰好へと変わっていく。
柔らかくて甘くて砂糖菓子みたいなキスは、すぐに形を変えてしまう。

「マモルさん、大好きです」
「僕もあなたが大好きです、ヒヨリさん」

恋をするって凄い。
手を繋いでも、キスをしても、もっともっとと欲張ってしまう。
触れている部分から伝わる熱も、鼓動も全部、独り占めしたい。
子供みたいな我侭は胸に秘めることが出来ずに零れ落ちてしまいそう。
だから私は離れたばかりの唇を、またキスで塞いだ。

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