地獄には季節がない。
だから四季の移り変わりと言うものを、私は人間道に来て初めて知った。
春は美しい桜が咲き、
夏はうだるような暑さの中、溶けかけたアイスを食べ、
秋は実りの季節と言われるだけあって美味しいものに溢れかえった
そうして冬――
真っ白い雪が地面を覆い、雪だるまやかまくらを作ったり出来たら楽しいだろうと思っていたのだけれど……
「……寒い」
ぶるりと体が震える。
私が思い描いていた冬とは全く違い、雪は降らないのに朝晩の冷気がそのまま家の中に流れ込むのか、どこにいても猛烈に寒い。
その寒さに耐えかねて、私はついにあるものを買ってしまった。
自室で震えてると、コンコンと部屋のドアがノックされた。
返事をかえすとドアの隙間から誉那が顔を覗かせた。
「おーい、凛。あんたに荷物が届いたけど」
「! 待ってたの!」
布団から飛び出し、誉那の元に駆け寄る。
そんな私を彼は目を細めて見つめながら、運んできてくれた荷物を部屋へと入れてくれた。
「ところでこれ、何なんだ? 随分大きいけど……」
「ふふ。とってもいいものよ。そうだ、この後時間ある? 良かったら一緒に使ってみましょう」
「一緒に使う……?」
「その前に組み立てなきゃいけないけど」
私の説明から何を想像したのか、誉那の頬が赤く染まった。
「これは……」
「そう、炬燵です」
組み立て終わった炬燵を見て、誉那が「テレビで見たことある」としきりに感動する。
その様子に私まで嬉しくなる。
寒さに耐えかねて買ってしまったぜいたく品だけど、背に腹は代えられない。
早速スイッチを入れて、炬燵に入る。
炬燵の中はまるで天国……いや、地獄だ。
さっきまで足先まで凍えるほどの寒さだったのに、ぽかぽかと暖気に包まれていく。
「ほら、誉那も」
「ああ、お邪魔します」
私の隣に入ってくる誉那。
小さな炬燵だからぴったりくっつかないと二人入れない。
炬燵の中で足がぶつかり、思わず心臓が跳ねる。
「うお、熱い」
「誉那は寒くないの?」
「ん? 寒いといえば寒いけど、これくらいなら全然余裕――じゃない。寒い」
口ごもる誉那をじっと見つめると、彼は気まずそうに視線を逸らす。
「本当に?」
「……炬燵から追い出さない?」
「追い出さない」
「これくらいの寒さなら平気だけど、あんたとくっつきたいから寒いことにしたい」
「……ふふ、素直でよろしい」
甘えるように誉那の肩によりかかる。
腕が触れ合うと、確かに彼の体は私よりもずっと温かかった。
(これだったら炬燵はいらなかったかも、なんて)
言ったら誉那はどんな顔をするのだろうか。
ちらりと彼を見つめると、誉那が私の肩を抱いた。
触れた唇は、炬燵の中よりもきっとずっと熱いだろう。
そう確信しながら、私はそっと目を閉じた。