深夜のドーナツ(モズテウ)

夜。喉の渇きを覚え、キッチンに行くとリビングで唸るテウタを見つけた。

「んー、どうしよう」
「テウタ、どうかした?」
「あ、モズ。今悩んでたの」
「そうみたいだね」

彼女の前にはドーナツがプリントされた箱があった。
それは昼間スケアクロウが買ってきたドーナツだった。
金曜日の夜、テウタはいつもの集まりに出ていたので帰宅が遅かった。
ドーナツがあると気づいたのは、シャワーを浴びた後だという。
まだ髪が少し湿っていた。そのせいだろうか、いつもより彼女が艶めいて見えた。

(頭の形がいつもよりよく分かるからかな)

ミネラルウォーターをグラスに注ぎ、テウタのところに戻る。
彼女はまだ悩んでいた。

「んー、でも……」
「どれを食べるか悩んでいるの?」
「二つまで絞り込めたんだけど、そこから決められないの」
「一つは今食べて、もう一つは明日食べたら?」
「その一つが決められないの。明日にはまた違うのが食べたくなってるかもしれないでしょ?」

彼女の悩みは可愛い。
二つのドーナツの間で揺れ動く姿は微笑ましくて、いつまで見ていても飽きないだろう。
でも、彼女の方がそろそろ限界らしい。

「じゃあテウタ。僕と半分ずつにしようか」
「えっ、いいの?」

その言葉を待っていたのだろうか。
テウタの目がキラキラと輝く。

「あー……でも」
「でも?」
「……この時間にドーナツ食べても平気かな」

時刻はもうすぐ0時。今日が昨日になる。
最近の彼女は体重が増えることをより一層嫌がっている。
一グラムでも彼女が増えることが嬉しい僕にとっては不可解なことだけど、体重の増減に一喜一憂する彼女も可愛いので黙っておく。

「平気かどうかは分からないけど、君はこのままドーナツを食べないで眠れるの?」
「無理! もうドーナツの口になってる」
「だったら――」

ドーナツを一つ取り、真ん中で割る。
何か言おうとした彼女の口元に運ぶと、彼女は僕とドーナツを交互に見て、最後にドーナツにかぶりついた。

「ん! 美味しい! モズもはやくはやく!」
「うん」

お腹は空いていなかった。
だけど、テウタがあまりに美味しそうに食べるからお腹が空いてきた気がする。
そんなわけないのに。
彼女といると、自分がどんどん変わっていく。
それが今は嬉しい。

「うん、美味しいね」
「モズと一緒に食べるからより一層美味しく感じる」
「うん、僕もそう思うよ」

彼女といると心が満たされていく。
空っぽだった器に温かなものが注ぎ込まれていく。今はそれが溢れてしまわないか少し心配だ。

「テウタ」
「ん?」

唇の端にドーナツのかけらをつけているテウタ。
それを指で取って、食べかすを口に運ぶ。

「! も、モズ」
「どうかした?」
「どうかしたって……もう、モズのばか」
「うん、君といると馬鹿になるから」

僕の言葉にテウタは顔を赤くする。
深夜のドーナツ。
彼女と過ごす時間はいつだって僕を満たしてくれる。

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