帰り道。
コンビニに立ち寄った私は、店内をぐるりと一周した。
コンビニはとても誘惑の多い場所で、いつ来ても見たことのない新商品が並ぶ。
スイーツコーナーにあるわらび餅に誘惑されながらも、今日はカスタードの気分だったのでシュークリームを手に取る。
誉那の分は何にしようかなと顔を上げた時、たまたまお酒コーナーが視界に入った。
(あら? あれって……)
普段なら素通りするお酒コーナーに吸い寄せられ、重い扉を開け、目当てのものを手に取った。
これを見た彼はどんな反応をするだろう。
誉那の顔を思い浮かべながら、コンビニのレジへと急いだ。
「誉那!」
シェアハウスに戻ると、誉那の姿を探して、家の中をうろうろする。
リビングにも、部屋にも、お風呂場にもいない。
そうなると、彼がいるのはここしかないだろう。
屋上の扉を開けると、案の定誉那の姿があった。
彼が設置した椅子で、のんびりと寛いでいるようだ。
「凜、おかえり」
「ただいま。ねえ、誉那これ見て?」
彼の椅子の空いているスペースに座ると、コンビニ袋から買ってきたものを取り出した。
私が買ってきたのはお酒だ。
缶にはお月様と『YONA YONA ALE』という文字が躍っていた。
「誉那の名前が入ってるの。嬉しくて思わず買ってしまったわ」
無駄遣いは駄目だと日頃タマに言っているくせに。
好きな人の名前が商品名に入っているだけで嬉しくて買ってしまったなんてタマには言えない。
「へえ、そんなのあるんだな」
感心した様子でラベルを見つめる誉那。
想像していたよりも落ち着いた様子に少しだけがっかりする。
「村上殿はずいぶん落ち着いているのね」
「え? いや……ごめん、実は俺もコンビニで見かけたことあったんだ」
「そうなの?」
誉那は少しだけ申し訳なさそうに頬を掻く。
私はたまたま今日見つけたけれど、決して珍しいものではなく頻繁に陳列されていたようだ。
「でも、あんたが離れてる時も俺のこと考えてくれてるみたいで嬉しい」
「そんなの……」
当たり前だ。
どこかに出掛けていても、誉那はこれが好きそうだ苦手そうだなんて勝手に頭に浮かんでくる。
一緒に出掛けた場所であれば、その時の思い出をなぞってしまう。
熱くなった頬を誤魔化すように誉那から顔を逸らすと、誉那は私の手から缶を取り、それを火照った頬にぴたりと押し付ける。
「きゃっ」
「はは、冷たかった?」
「……もう」
嬉しそうに笑う誉那が眩しくて、見ていられない。
反対の頬を誉那の大きな手が包み込む。
下げた視線を戻させられ、心臓が早鐘を打ち始める。
「凜、俺のことを考えて買ってきてくれてありがとな」
嬉しそうに目を細めて笑う誉那が眩しくて、可愛くて。
気付けば買ってきたシュークリームを頬張る前に、誉那の唇を食んでいた。
いつも、いつでも、あなたのことを想ってる。
誉那もそうであればいい。
私の腰に回された誉那の手のひらが、たまらなく愛おしくなった。