今日も今日とてシアンさんの研究室の掃除に励む。
床に散らばったパズルのピースを拾ってから、棚にはたきをかけていく。
(それにしても今日はなんだか汗ばむ陽気よね)
根本的な解決にはならないと分かっていても、ついつい手で風を送ってしまう。
ついには暑さのせいで眩暈を覚え、部屋の窓を開けてみようかと考えた時だった。
「……セレス」
「! おかえりなさい、シアンさん」
会議に出かけていたシアンさんがいつの間にか入口に立っていた。
ドアが開いたことにも気づかなかったため、驚いてしまう。
シアンさんはつかつかと私の元へやってきて、顔がぶつかりそうな距離で私を見つめた。
「あ、あの? シアン……さん?」
「……」
声をかけてもシアンさんは口を開くことなく、私を黙って見つめるばかり。
一体どうしたのだろう、と小首をかしげた瞬間、彼の手が伸びてきた。
「きゃっ」
「ああ、やはりな」
「な、なにがですか?」
突然私を抱きしめたシアンさん。
彼の行動に驚かされるのも、抱きしめられるのも、これが初めてというわけじゃない。
だけど突然好きな人から抱きしめられれば、胸の鼓動は大きく跳ねてしまうのは仕方ない事だ。
「セレス、お前……具合が悪いだろう」
「え?」
シアンさんは私の体を強く抱きしめ、私の額を自分の肩へと押し当てる。
服越しに伝わってくるシアンさんの体温がいつもより低いことに気づき、慌てて顔を上げた。
「あら? シアンさん、いつもより体温が……」
「俺の体温が低いんじゃない。お前の体温が上がってるんだ。寒気はないか?」
「そういえば……いつもより汗ばむなぁとは思っていたんですけど」
呆れた顔をして、私を見下ろした後、シアンさんはひょいと私を抱き上げた。
「あ、あの!?」
「黙っていろ。口を塞ぐぞ」
シアンさんは私を抱きかかえたまま、歩き出す。
向かう先はシアンさんが日頃仮眠に使用しているソファだ。
シアンさんは私をそこに下ろすと、肩を押して、私を寝かせた。
その途端、さっきまで平気だったのに、体がずっしりと重くなった。
「お前はもう少し自分の心配をしろ」
「……どうして気づいたんですか?」
私自身さえ自覚していなかったのに。
私の問いに、シアンさんは目を細めると
「恋の力だ」
と冗談なのか本気なのか分からない言葉を口にした。