二人きりの世界(九玲)

窓の外はざあざあと雨が降る。この季節ではすっかり見慣れた光景だ。
「今日も雨だな」
「そうですね、先週梅雨入りしたってニュースやってましたもんね」
しとしとと雨が降る。梅雨の雨は比較的穏やかで、地面を叩きつけるような激しいものではないことだけがせめてもの救いだ。
「貴方は雨が嫌いか?」
「雨は嫌いじゃないんですけど、洗濯物がなかなか乾かないのが今の悩みです」
「豪も似たようなことを言っていたな」
そう言って、壮馬さんは小さく微笑んだ。
「壮馬さんは雨、嫌いなんですか?」
「私か? ふむ……」
同じ問いを投げかけてみると、壮馬さんは顎を軽く撫で、窓の向こうに目を遣った。
「幼い頃はよくベッドの中で雨の音を聞いていた。世界から自分だけが切り取られたような感覚がして、少し苦手だったかもしれない」
「……」
幼い頃の壮馬さんを頭に描く。身体が弱くて、今よりも寝込むことが多かったという。遊びたい盛りの子供がベッドで過ごす時間は辛かっただろう。雨の日なんて特に。想像するだけで胸が締め付けられた。
「だが、今は雨が嫌いではない」
「それはどうしてですか?」
遠くを見ていた瞳が私を捉える。たったそれだけで胸の鼓動が高鳴った。
「こうして雨が降っている時間は貴方を私の傍に引き留めることが出来ると知ってしまったからかもしれない」
「――ッ!」
「などと言ったら、貴方は困るか?」
「いえ」
私が首を左右に振ると、壮馬さんは目を細めた。
「そもそも私は雨が降っていても降ってなくても、壮馬さんの隣にいたいと思ってますよ?」
壮馬さんの手をそっと握る。外の雨のせいだろうか。少しひんやりとしていた。壮馬さんの手を温めるようにぎゅっと握ると、壮馬さんは照れたように微笑んだ。
「雨がもっと好きになるように、貴方を抱きしめてもいいか?」
「ふふ、もちろんです。ちなみに私はもうさっきよりも雨がとても好きになってます」
「奇遇だな。私もだ」

しとしとと雨が降る。
雨が奏でるメロディーに耳を傾けながら、私たちは隠れるようにキスをした。

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