甘めの採点(宮玲)

「やっぱり厳しいかもしれない……」
姿見に映る自分を見て、ため息をつく。二年前、一目惚れをして買った紫陽花柄のワンピース。買った年は勿体なくてあんまり着れなかったが、洋服には流行り廃りもあるし、私自身が買った時と何も変わらずにいられない。
「あの時いっぱい着てれば良かったかなぁ」
なんて今更後悔しても遅い。ふわふわの甘めのデザインを着こなせていないとは分かっているものの、このまま捨てるのは惜しい。ここは第三者の目でジャッジしてもらおう。そうすれば、きっぱり諦められるかもしれない。

「豪さん、ちょっとだけこっちを向いてもらえますか?」
キッチンで昼食の支度をしてくれている豪さんの元へ向かう。私の呼びかけに、くるりと振り返った豪さんは私を見た瞬間、驚いたのか目をまんまるにした。
「や、やっぱり駄目ですかね?」
「駄目? まるでお花畑から飛び出してきた花の妖精みたいで驚いちゃいました」
豪さんは優しく微笑むと、私をそっと抱き寄せた。ふわりと揺れるスカートの裾に、豪さんの笑みは深くなる。
「可愛い。裾がふわふわしてて、玲さんにとってもよく似合ってます」
「うっ……本当にそう思います?」
「ええ、もちろん」
恋人の欲目だろう。豪さんは私を褒めちぎる。嬉しいやら恥ずかしいやらで、じんわりと頬が熱くなっていく。
「こんなに可愛い玲さんを他の人に見られたくないから、着るのは俺の前だけにしてもらえますか?」
火照った頬をゆるりと撫でる豪さん。顔をあげると、ワンピースの紫陽花よりも深くて美しい青と目が合った。
「分かりました。豪さんの前だけで着ます」
「本当? 嬉しい」
喜びを分かち合うみたいに唇が重なる。触れるだけのキスはくすぐったくて、少し照れくさい。
「折角だから、お昼を食べた後はデートに出かけませんか? ちょうど紫陽花が綺麗に咲いている場所があるんです」
「紫陽花! 素敵ですね」
さっきまでもう着るのは難しいかもしれないと悩んでいたワンピースが、まさかデートのきっかけになるとは。
「でも、その前に……もう少しだけ」
離れたばかりの唇がもう一度重なる。触れては離れて。また触れて。何度も繰り返されるキスに甘やかな雰囲気になっていく。
「ふふ、可愛い」
「もう豪さん……それは恋人の贔屓目です」
「俺だけが特別に可愛い玲さんを見れるんなら良いんです」
そう言って、また唇が重なった。
デートに出かけるのは、もう少し先になりそうだ。
豪さんの背中に手を回しながら、これから二人で見る景色に思いを馳せるのだった。

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