(こんなもんかな?)
両腕に荷物をぶらさげながら、ポケットにしまってある買い出しメモをなんとか引っ張り出す。
買い忘れがないことを確認し、よろよろと歩き出す。
(お、重い……!)
買い出しに行くならあれもこれも、と欲張りすぎた結果、腕がちぎれそうなほどの荷物になってしまった。
誰かに付き合ってもらえば良かったかもしれない、などと今更後悔しても遅い。
(私の腕がちぎれても、なんとしても荷物だけは持って帰らないと……!)
そう意気込み、一歩踏み出した時だった。
「わっ……!」
突然、腕が軽くなった。
「こんな事だろうと思った」
「シオン!?」
振り向くと、呆れ顔のシオンが立っていた。
片手には私の荷物。どうしてシオンがここに? と驚いて彼を見つめていると、シオンは無言でもう一つの荷物も持ってくれた。
「シオン、それ重いから……!」
「だから俺が持つんだろう。さっきのお前、よたよた歩いてて、そんなんじゃいつまで経ってもたどり着かないぞ」
「うっ……それはその通りなんだけど……じゃあ、一つだけ持つの手伝ってくれないかな?」
さすがに二つともシオンに持ってもらえるのは申し訳ない。
一つだったら私にも持てるだろう。そう思い、シオンに提案すると――
「じゃあ、こっち」
「え?」
シオンが差し出したのは、二つ付いている持ち手の一つだった。
それってつまり……一つの荷物を二人で持つということだろうか。
なんだかそれって……夫婦みたいだ。
「ええと、じゃあ……」
それを指摘したらきっとシオンは荷物を持たせてくれないだろう。
だから私は何も言わず、持ち手を握った。
「そういえば今日は一日出かけない予定じゃなかったの?」
「そのつもりだったんだが、気が変わった」
「そうなんだ」
出かける前にシオンの様子を見に行ったら、真剣な顔で机に向かっていたので声をかけるのをやめたのだ。
あの時、声をかけていたら一緒に出掛けられたのかな。一瞬邪な考えが浮かんでしまい、慌てて首を振る。
「? どうした、急に頭を振って」
「う、ううん!? なんでもないよ。それよりシオンが来てくれて助かっちゃった。ありがとう」
「お前の買い出しメモが見えたからな。本当は一緒に出掛けようと思っていたんだが、気づいたらお前がもう買い出しに出て――て、そうじゃなくて」
「え?」
「なんでもない。たまたま、たまたまだ」
「そ、そうなんだ」
シオンも、一緒に出掛けたいと思ってくれていたんだろうか。
そう思ったら、胸の奥がきゅんと疼いた。
「今度から荷物が多くなる時は声をかけろ。お前にはいつも世話になってるんだから、買い出しくらい付き合う」
「え? でも、悪いよ、そんな」
「また大荷物になって帰り道困ったお前を探しに来るより効率がいいだろ」
「……探しに来てくれるつもりなんだ」
「!! 違う、いや、違わないが」
「ふふ、ありがとう。うん、じゃあ今度の時は付き合ってくれると嬉しいな」
「ああ、任せろ」
さっきまで途方に暮れていたのが嘘みたいだ。
シオンの優しさに、胸がいっぱいになる。
夕焼けが私たちの影を映し出すと、まるで親子みたいな影が出来ていて。
シオンは気づいたら、どんな顔をするんだろうか。
そんな事を思いながら、隣の彼の表情を盗み見るのだった。