待ち人、来る(カイキサ)

カイさんを探して大伊達山まで足を運ぶ。
山の中は空気が澄んでいて、ゆっくりと深呼吸をしたくなる。
けれど今はカイさんを見つける事が先だ。
私はきょろきょろと周囲を見回しながら、カイさんの姿を探す。

「カイさーん、カイさんいますかー?」

名前を呼びながら歩いていると、近くの茂みからガサっと音がする。
ひょこっと姿を現したのはオナカだった。

「オナカ、カイさん見なかった?」
「きゅい? きゅー、きゅいっ」
「はは、聞いてみたけど分かんないや」

可愛らしい鳴き声をあげるオナカの頭を指の腹で、ふにふにと撫でてやる。
オナカは小首をかしげながらも、指が気持ち良いのかうっとりと目を閉じる。

「カイさん、どこにいったんだろうなぁ」

ここにくればきっといるだろうと思ったんだけど、当てが外れてしまったようだ。
肩を落としていると、不意に声が落ちてくる。

「立花、どうかしたのか?」
「カイさん?!」

慌てて振り返ると、そこにいたのはカイさんだった。
私の後ろにいるという事は、つまり私の後に山へ入ったという事だろう。

「すまない。お前が急ぐように歩いているのを見てたら声をかけるタイミングを失った」
「いえ、それは私が悪いので……でも見つかって良かった」
「……俺を探していたのか?」
「根地先輩がカイさんの事探してたので、私が呼びに来ました」
「…………そうか」

なぜだろうか。カイさんが少し寂しそうに見えた。
来たばかりだが、カイさんはくるりと方向転換し、山を下り始める。
オナカに別れを告げ、カイさんの背中を追いかける。
カイさんは私が追い付くのを待ってくれていたのか、いつもよりゆっくりとした歩調で歩いていた。おかげですぐにカイさんの追いついた。

「実は……今日はまだ会えてなかったので、カイさんに会いたいなと思って根地先輩の代わりに探そうって立候補したんです」
「―-っ! ……そうか」
「せっかく山に来たばかりだったのにすいません」
「お前が謝る事じゃない。それに……」

カイさんが足を止めた。反応が遅れた私はカイさんより数歩進んでしまった場所で立ち止まる。

「ここに来たのは山に来たかったからじゃなくて、ここにいたらお前が来ると思ったのかもな」
「それって……」

カイさんはどこか晴れやかな表情を浮かべ、再び歩き出す。

(まさかカイさんも私に会いたいと思ってくれていた……?)

淡い期待のようなものが頭をよぎるが、慌ててそれをかき消すように頭を振る。

「立花、行くぞ」
「あ、はい!」

山を下りて、根地先輩の元へカイさんを送り届ける間の少しの時間。
少し落ち着かない気持ちを持て余すのだった。

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