恋人にキスをせがんでみた~関大輔の場合~

「大輔さん、キスしてもいいですか?」

大輔さんは家の中で煙草を吸わない。いつも必ずベランダで一服するのだ。
金曜日、いつもの見回りを終えて私たちは家に帰ってきた。
少しレベルが上がったとはいえ、拙い手料理を美味しいと言って完食してくれた大輔さんは今日も食事の後、一服すると言ってベランダに出ようとする大輔さんを追って、私もベランダへ出た。
「寒くない?」
「大丈夫です! これくらいの時間の空気って、ひんやりしてて気持ち良いというか、身が引き締まるというか」
「はは、それは少し分かるかも」
「ですよね」
大輔さんは小さく笑いながら、煙草をくわえる。それから煙を吸い込んで、紫煙を吐き出す。冬の空気に攫われていくそれを横目で見ながら、私はうずうずする気持ちを抑えている。
「玲?」
「……! あ、あの、大輔さんっ」
あまりにも挙動不審だったのか、大輔さんが優しく声をかけてくれる。それでぽーんと勢いよく理性が飛んで行ってしまう。
今週、とても忙しかった。大輔さんと一緒に夕食を食べれたのも今日だけだ。簡単に言ってしまえば大輔さんが足りないのだ。
私の言葉が思いも知らないものだったのか、大輔さんは驚いたように目を見開いてから、優しく微笑んだ。刷っていた煙草を灰皿に押し付けると両手を広げる。
「俺もずっとしたいと思ってたんだ。おいで、玲」
「大輔さんっ」
好きな人からのおいでは反則だと思う。吸い寄せられるように大輔さんの胸に飛び込むと逞しい胸板に頬を寄せる。
「大輔さん、大好きです」
「俺も、好きだよ」
顔を上げると、大輔さんの瞳に自分が映りこんだ。どんな顔をしているかまでは見えなかったが、多分大輔さんの事が大好きで仕方ないという顔だろう。
ようやく重なった唇。触れ合った舌は、少し苦くて。
大人の味に、より一層ときめくのだった。

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