「樹さん、キスがしたいで――」
私の恋人は料理の腕前がプロ級だ。ごはん系だけじゃなく、スイーツもお手の物。今日も朝からいそいそと生地を作って、シュークリームを作ってくれた。
「美味しい! 家でこんな美味しいシュークリーム焼けるだなんて!」
「シュー生地は慣れれば案外簡単に出来るんだよ」
「慣れるまでが大変そうですね。シュー生地はサクサクしてて、中のカスタードクリームも美味しいです!」
二つ目のシュークリームにかぶりつくと、中からホイップクリームといちごのクリームが溢れた。
「わっ、零れちゃう」
手についたクリームを急いで舐めてから、改めてシュークリームを頬張る。すると隣にいた樹さんがこらえきれないというように噴き出した。
「ここにもついてるぞ」
樹さんの指が私の唇の端をそっと撫でる。どうやら舐めきれなかったクリームがついていたようだ。そのクリームをあろうことか樹さんは舐めとると「ちょっと甘すぎたか」と呟いた。
(今の、なんか凄く……! えっちだな……)
ちらりと見えた赤い舌とか。指先とか。あらぬ方向に思考が飛んでしまい、慌てて頭を左右に振るとぽんぽんと頭を撫でられる。
「そんなに暴れるほど美味いんだったらまた作ってやるから。落ち着いて思う存分食べろ」
「うっ……あ、りがとうございます。樹さん、あの……」
堪えきれなくなった私は、シュークリームを一旦お皿の上に戻して樹さんに向き直る。
「キスがしたいです」と言い切る前に腕を引かれ、目を閉じる間もなく唇を奪われた私は、甘い甘いキスに溶かされていくのだった。