恋人にキスをせがんでみた~都築誠の場合~

「誠さん、キス……してもいいですか?」

誠さんの家のソファに並んで座りながら、私は彼の新刊を読んでいた。誠さんの書く恋愛小説を読む事は禁止されてしまったんだけど、それ以外は今まで通り読ませてもらっている。
パタン、と新刊を閉じた私は隣にいる誠さんの服の裾をちょいちょいと引っ張ると、私が買ってきたケーキを夢中で食べていた彼がこちらを向いた。
「キスしたくなるようなシーンあっただろうか」
「あのラストシーン……! 凄く良かったです! 主人公二人が決して言葉にしない愛の言葉がぐっと伝わってきて!」
「ふむ、君はそう捉えたか」
「……もしかして解釈違いでしたか?」
「いや、そういう事ではない。ただ、読み終わってキスしたいと言われるとは思ってなかった」
「うっ、すいません……」
誠さんの本は凄い。感情があらゆる方向に揺さぶられる。今回はミステリー小説だったので、恋愛要素は沿えるだけ程度の内容だったはずなのに。読み終わった後、その二人の未来に想いを馳せてしまうんだから。
少し冷静さを取り戻した私は、キスがしたいなんて言った事が恥ずかしくなり、誠さんから手を離そうとすると彼にその手を握られてしまう。
「キス、したいんじゃなかったのか?」
ぐっと誠さんが距離を詰めてくる。それだけで私の鼓動は早鐘を打ち始める。
なんて返事するのが正解なのだろうと言葉を探してみるが、結局浮かんだのはこれだった。
「……したいです」
「ああ、俺もしたいと思っていた」
そう笑って、そっと唇を重ねる。甘いキスはカスタードクリームの味がした。

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