Blue Rose(アダ→テウ)

かなわない。
そんな事、六年前から分かっていた。

 

いつもの金曜日。
「あ、ルカからメッセージ来たよー!もう、せっかく今日はアダムが遅刻しないで来れたのに、ルカが遅刻だなんて!」
「じゃあ今日はルカのおごりだね」
「ルカが来たらいっぱい頼むんだから!」
ルカに返事を打つためにテウタがスマホを操作する。
その間に胸ポケットに閉まっていた僕のスマホがメッセージの受信を知らせるべく振動する。確認すると、送り主はルカだ。
『まだしばらくつかないから、二人で楽しんでよね』
ルカはたまにこうやって僕に気を回す。テウタと二人で過ごさせてやろうという親友のありがたくも迷惑な気回しに、『早く来ないとテウタが寂しがるよ』と手早く打って、返信を送る。

「あ、ねえねえ。アダム。ちょっとこれ見て」
「わあ、凄い量のボトルだね」
テウタが見せてきたのはスマホの画面だ。画面いっぱいに並ぶ様々な色のボトルは見覚えがあった。確かカラーセラピーで使うものではなかっただろうか。
「今日ね、取材先で教えてもらったんだ。ね、どの色が気になる?」
「うーん、そうだなぁ……」
スマホの画面をしばし見つめる。目が疲れているのか、ちょっと視界がぼやけるか瞬きを繰り返すとようやく視界がクリアになる。
「この青いボトルかな」
「やっぱり! アダム、青い花好きだから、それを選ぶかなーって思ったの!」
「それで? そのボトルは何なの?」
「えーとね、その人の本質を現すんだって。青はね…ちょっと待ってね」
スマホをせっせとスワイプするテウタ。意味を探してくれているようだ。
「テウタはどの色を選んだの?」
僕の問いかけにテウタは手を止め、にんまりと笑みを浮かべる。
「私? ふふーん、私はね」
画面を戻し、テウタは一つのボトルを指さした。
「これ!」
「あれ? それって僕と同じ色じゃない?」
「そうなの! この色見た時にあっ、アダムだ! って思って迷わず選んじゃった。でも、それならルカの色も選ばないとルカ寂しがるかなーって思って、次に選んだのはルカの色だよ」
「はは、テウタらしい。でも、これってカラーセラピーじゃないの?
僕やルカの色って選んだら、セラピーにならないんじゃないのかな」
「そう、そうなの。取材した人にも言われちゃったんだよねー。でも、その人にね、『それだけ特別に想う相手がいるなんて良いですね』って言われたから嬉しくなっちゃった」
「……そっか」
その笑顔があまりにも眩しくて、ああ、テウタには敵わないなと笑ってしまう。

 

「二人ともお待たせー!」
「もう、ルカおそーい!」
「ルカ、お疲れ様」
ようやくルカが到着し、追加でビールを頼む。
テウタがメニューとにらめっこしている間にルカが僕に軽くウィンクを飛ばすので、苦笑いで応える。
ジョッキが3つ運ばれてきたところで、改めて僕たちは乾杯する。
金曜日の夜。いつもと変わらない、僕たちの集会。

「んーっ! 美味しいっ! ねっねっ、このアヒージョ、めちゃくちゃ美味しいよ!」
「えっ、マジ!? 私も食べよっと!」
「ルカ、慌てて食べると火傷するよ」
「テウタじゃないんだし、そんなへましないって」
「ちょっとルカ? 私なら火傷するっていうの?」
何でもない会話の一つ一つが楽しくて、つい表情が綻ぶ。
この時間は、僕にとってかけがえのないものだった。

 

 

叶わない恋だと知っていた。
だけど、なんて幸せな恋だったんだろうか。
君に恋をしたこの人生に、悔いはない。
僕は心からそう思うんだ。

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