0時5分(菅玲)

「――っ!」
はっ、と目を覚ます。
時間を確認するためにスマホに手を伸ばすが、いつもの場所にない。
そもそもここは私の部屋のベッドではない、と思い出した。
さっき服を脱ぐ時に外した腕時計の存在を思い出し、それを確認すると0時を五分も過ぎていた。
がっくりと肩を落とした私は、ようやく隣にいる温かな気配に視線を遣る。
「ん? 起きたの、玲」
大きな手が私の頭をゆっくり撫でる。夏樹くんは酷く優しい瞳で私を見つめていた。
その視線にドキリと心臓が跳ねる。
夏樹くんの不意に見せるこういう顔に私はとても弱い。
「夏樹くん」
私は体を起こし、タオルケットで体を隠しつつ彼に向き直る。
「お誕生日、おめでとう。本当は12時ちょうどに言いたかったのに、寝ちゃうとは……」
普段なら平日の夜にお泊りなんてしない。だけど、夏樹くんの誕生日。一番におめでとうを言いたかったから、泊まっていいか尋ねた。
すると、夏樹くんは私が泊まりにくる事を大変喜びまくった結果、夕食を外で食べてきたのもあり、部屋に着くなり、早々に私をベッドに連れ込んだ。
「玲、めちゃくちゃ寝息立てながら寝てた」
「えっ、寝息!? どんな?」
「すーすーって。可愛いやつ」
「うっ……そ、それはどうも?」
「ふっ、何それ」
寝息を立てて寝ていた事が恥ずかしくて、顔を覆いたくなる。
「ありがとな、玲。誕生日、祝ってくれて嬉しい」
「……うん。あ、プレゼント……! ちょっと待ってね」
夏樹くんの言葉を噛みしめ、彼に渡すプレゼントが入ったカバンを探す。
部屋のソファの上に放り投げたままのカバンを見つけ、中に手を突っ込む。
「……あれ? えっ?」
手探りで探しても見つからない。慌ててカバンを大きく開けて中を確認するが、ポーチやお財布といった自分のものしか見当たらない。
夏樹くんへのプレゼントはどこに行った? と困惑していると、そういえば今日お昼休みにカバンから取り出した事を思い出した。そして、そのまま自分のデスクに忘れてきたのだ。
「ごめん、夏樹くん……プレゼント、デスクに忘れてきたみたい」
タオルケットを引きずりながらベッドに戻ると、夏樹くんはまた笑う。
「んー、じゃあさ。俺の欲しいものちょうだい」
「私があげれるものならいいよ。あ、ちゃんと買っておいたプレゼントも渡すけどね」
「それも楽しみにしておく。でも、俺が欲しいのは――」
そう言って、夏樹くんは私の頬をゆるりと撫でる。その手つきは酷く優しいものだった。
「玲が欲しい」
その言葉に、心臓を鷲掴みにされた気分だ。
だけど、私は小さく首を横に振る。
「だめ?」
「あげれないよ、今更」
私がそう言うと、夏樹くんが小さく息を飲むのが分かった。
「だってもう、夏樹くんのものだもん」
「ーーっ、はは……玲ってば」
強く引き寄せられ、そのまま夏樹くんの胸に倒れこむ。
トクントクンといつもより早い鼓動が伝わってくる。
もしかして、私の言葉に緊張したんだろうか。そう思うと夏樹くんが愛おしくて仕方がない。
「夏樹くん、お誕生日おめでとう。大好きだよ」
「ありがとう。俺も、お前が好きだよ、玲」
大人の階段をまた一つ登った夏樹くんと、初めてのキスを交わした。

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