姿が見えないと思って、いつもの場所へ行くと彼はやっぱりそこにいた。
「ヴィルヘルム」
「おう、ラン」
彼の隣に座り、手元を見ると剣の手入れをしていた。
乾いた布で丁寧に磨く姿は何度見ても飽きない。
「ヴィルヘルムって剣の手入れ好きよね」
「ん?そりゃあ、相棒だからな」
戦場にいつ出ることになっても良いように、と昔から手入れには余念がなかったというのを聞いた事がある。
普段、割とモノを乱暴に扱うイメージがあるんだけど(服とか脱いだら脱ぎっぱなしだし)、大事なものはきちんと大事に出来る人なんだと再確認する。
「ヴィルヘルムってそういうところきちんとしてるよね」
「そうか?大事なものを大事にするのは当たり前だろ」
「ふふ、そうね」
手入れの邪魔にならない程度に軽く寄りかかる。
すると、ヴィルヘルムが私の頬を優しく撫でた。
「お前のことも大事にしてるだろ?」
「・・・っ」
不意打ちだ。
思わずヴィルヘルムの顔を見つめると、眉間に皺を寄せて困ったような顔になる。
「え、伝わってねえか?」
「え、と」
伝わってるか伝わってないかで言えば、伝わってる。
だけど、こんなタイミングで大事だとストレートに言われると思ってなかったし、私の反応を見て困るのも予想外で。
ヴィルヘルムは少し考え込んだ後、私の頭を優しくなで始めた。
「ヴィルヘルム?」
「・・・伝わるか?これで」
さっき、剣を丁寧に磨いていたのを思い出す。
大事にするというのを行動で示すにはどうすれば良いか考えた結果がこれなんだろう。
剣を丁寧に磨いたように、私のことを優しく撫でる。
意図に気付いた瞬間、馬鹿みたいに鼓動が高鳴る。
「うん、伝わってる」
「そうか」
撫で続けてくれる彼の手が愛おしくて仕方がない。
大事にされてるのなんて知ってるのに。
「私がヴィルヘルムを大事に思ってるのは伝わってる?」
私も彼に手を伸ばして、頭を撫でる。
まるで太陽に手を伸ばしたみたい。
「さあ、どうだろうな」
嬉しそうに笑うヴィルヘルムを見て、私も笑っていた。